5月14日にバングラデシュの沿岸部を襲ったサイクロン・モカ(Mocha)の被害を受け、シャプラニールはパートナー団体YPSAと協働し、緊急救援として被災地で食料配布を実施しました(詳しくはこちら)。今回サイクロンが上陸する前から情報収集を行い、迅速に支援を決定したことにより、発災直後に食糧配布を行うことができました。
サイクロン・シドル(※)並みの被害が懸念されていたサイクロン・モカですが、上陸時の最大風速は予想を下回り、高潮が発生しなかったこともあり大きな被害は免れることができました。しかし、発災前から準備を行い、大規模な被害に備えて速やかに物資調達等を行ったことは非常に重要であったと考えます。今回サイクロン発生直後に食料配布を行ったことは裨益者や地方行政から高く評価されており、特に脆弱な世帯の生活の回復に貢献できたと言えます。
※2007年11月にバングラデシュ・インドを襲った大型サイクロン。バングラデシュでの死者数は2000人を超え、寛大な被害をもたらした。
今回の食料配布と併せて、シャプラニールはYPSAとともに被災地の状況やニーズを把握するための調査を行いました。5月16日~17日の2日間で、被害の大きかったコックスバザール県テクナフ郡のシャポリドゥイップ(Shahporir Dwip)地区においてフィールド調査を行いました。被害状況の視察を行った他、被災者とのグループディスカッションや地域関係者へのインタビューを行いました。
主な調査結果
多くの家屋が竹とビニールシートでできた簡易的なつくりとなっていたため、家屋の一部もしくはすべての損壊が多数見受けられました。家屋被害について、地域行政の見立てでは、50%の被災世帯は自力で修復可能であり、50%は支援が必要であるとされています。調査時点では、25%の世帯が修復を開始していました。
また、今回のサイクロンにより脆弱世帯の収入に多少の影響が出る見込みです。多くの住民が日雇い労働者であり、今季は漁業が主な収入源となっていますが、サイクロンが発生する6日前から雨により漁に出ることができなかったため、収入を得る機会が失われてしまいました。その他、農作物や家畜の損失、サイクロン時や避難時の盗難など、何らかの経済損失を被った世帯も多数見受けられました。
対象地域では他の2団体による食糧配布や現金給付の支援があったとの報告がありましたが、その他の支援の情報はありませんでした。シャプラニールとYPSAによる食糧配布の支援は、数少ない支援の中でも一番早く実施されたものであり、有意義であったと言えます。
今後の動きについて
今回の被害の規模、他団体や助成団体先の動向等を踏まえ総合的に検討した結果、現時点でサイクロン モカの被災地で更なる支援の実施はしないこととしました。
被害がより深刻であった隣国のミャンマーでの支援についても検討しましたが、情報収集を行った結果、ミャンマー国内の情勢等により実現性が低いと判明し、今回は支援を見送ることとしました。
シャプラニールは今後もバングラデシュで災害に脆弱な地域での活動を行い、緊急救援にとどまらない、防災の観点を意識した活動を展開していきます。