2024年5月末日、バングラデシュにサイクロンRemalが襲来し、南部沿岸地域を中心に堤防の決壊による浸水等の被害が発生、多くの人々が避難を強いられました。
シャプラニールは、これまで防災の取り組みを一緒に行ってきたパートナー団体・JJSとともに、事業地コイラ県コイラ郡内のコイラショドルユニオンの300世帯に対して食料配布を行いましたので、ここで報告いたします。
今回のサイクロンにより、高潮による洪水の発生、倒木による停電と通信遮断、数カ所におよぶ堤防決壊し、それが原因で住民の収入源となっている農地、エビの養殖場、家畜が流されたりと日常生活を送るにも大きな被害がでました。(写真:6月8日撮影)
支援の内容
コイラ郡内多くの被災地域には、政府とNGOが避難住民や漁師に少量の食糧配布を行っていましたが、コイラショドルユニオンにはほとんど支援が入っていませんでした。地方行政による水の配給はあったものの、十分な飲み水の確保とまではいかず、雨水の利用でしばらくしのぐ状況もありました。
そこで、私たちは以下の地域で、食料配布を実施しました。
・配布地域: コイラ県コイラ郡内コイラショドルユニオン(ユニオンはバングラデシュの最小規模の農村行政、地方政府の単位)
・食料配布の内容(1世帯分):
米10kg、油2L、豆2kg、セモリナ粉500g、砂糖1kg、経口補水液の粉末10袋、サニタリーナプキン1パック
地域の生活状況
食料を受け取った300世帯は堤防の外で暮らしており、高潮や洪水の被害を受ける可能性が高いです。漁業や日雇い労働で生計を立てている人が多く、一ヵ月の世帯収入は、5,000タカ以下(日本円で約6,000円)で暮らす世帯が半分以上(54%)と、非常に限られた収入で暮らしています。(1タカ=1.2円、9/20時点の為替レート)
今回、食料配布をしたのは、こうした堤防の外側に暮らし、元々経済的に厳しい状況にある先住民のムンダ族*を含む300の貧困世帯です。
*ムンダ族について:ムンダ族の人々は、バングラデシュ南西部の沿岸部や川の流域に暮らす、独自の言語を持っています。農業・漁業・エビの養殖などのほか、日雇い労働で生計を立てています。水くみの場で後ろに並ばせられたり、学校で後ろの方に座らされたりと、社会的差別を受けることも多いといいます。
サイクロンRemalの影響:住民のお話
今回のサイクロンの被害で、300世帯のうち約160世帯(53%)が一時的に職を失い、約75世帯(25%)が家畜を失い、そして40%以上の世帯がトイレやキッチン等の家が壊されたといいます。今回お話を聞いた方も、家屋が破壊されたことで、日常生活に困難を抱えていました。
《 マスラさんのお話 》
“セモリナ粉を使った料理を子どもたちがとても喜んでくれた”
夫と4人の子どもと住んでいます。夫は日雇い労働をしていましたが、サイクロンRemal襲来後の雨期と情勢不安が原因で失業しました。支援物資を受け取るまで食べていくのもやっとで苦しい生活でしたが、普段は購入できない種類の食料も受け取ることができて、家族は喜んでいます。
《 コマラさんのお話 》
“食料支援で1ヵ月間生活することができた”
ムンダ出身で、20年以上この地域に住んでいます。5年前に夫を亡くし今は一人暮らしです。農業で生計を立てていましたが、サイクロンRemalによって農地が流され、日頃育てていた食べものも収入も失う甚大な被害を受けました。食料支援はとても助かりました。1ヵ月くらいもちました。これからは被害を受けた畑を少しずつ回復させていきます。
これからのこと
サイクロンRemalは上陸前から非常に大きい規模と報道されており、シャプラニールもパートナー団体・JJSと協力しながら、サイクロンの進路を注視し、起こりうる被害に警戒をしていました。結果、サイクロンRemalは広域で甚大な被害をもたらし、多くの家屋、家畜、そして仕事までもを奪いました。
今回、パートナー団体・JJSよりサイクロン襲来後に被害の状況を聞き、緊急救援の準備を進め、郡内での選挙があったり、公務員のクオーター制度から始まり政変が起きるなど情勢の変化が著しかったですが、無事に予定していた食料支援を完了することができました。
今後ともシャプラニールはパートナー団体・JJSとともに事業地コイラ郡で地域防災力強化支援を引き続き行っていきます。ぜひ応援をお願いいたします。
これまでの支援活動について(過去ブログ)
・バングラデシュ サイクロンRemal上陸に対する対応について(2024年6月3日更新)
・見えてきた、バングラデシュ サイクロンRemalの被災状況(2024年6月3日時点)
・バングラデシュ サイクロンRemal 緊急救援