バングラデシュでは2000年に30局のコミュニティ・ラジオ局に対して事業許可が出され、現在は16局のコミュニティ・ラジオが国内で活動しています。シャプラニールは2016年度、このうちの4局で家事使用人として働く少女たちに関する番組を放送しました。4局が所在するのは、クリグラム、チッタゴン、モウロビバザール、ジェナイダの4つの県で、いずれも家事使用人として働く少女を多く送り出している地域です。
番組の内容は、家事使用人として働く少女たちの労働内容や労働時間、雇い主の子どもとの食事内容の違い、雇い主から受けるセクシャルハラスメントや暴力の事例などを物語や対談形式で紹介するもので、少女たちが直面している「現実」を農村部で少女たちを送り出している側の人々に伝えることが目的です。また、2015年に策定された「家事使用人の福祉と権利保護政策」の中で、少女たちにどのような権利があるかについての理解促進も目指しています。局によって内容や回数は変わりますが、シリーズものとして週に1回の頻度で放送しました。番組に地方行政官である県/郡の長や、弁護士、ジャーナリストなどをゲストとして招き、権利や法律、行政の制度といった色々な角度での意見交換を行うこともありました。
各ラジオ局は地域住民によって構成される聴取者クラブを持っているのですが、このクラブを通じてかなりの反響がありました。例えば、放送後に掛かってきた電話では、毎週の放送を心待ちにしていることや、放送を聞いた学校教師が「これは是非聞くべき!」と言って周囲に勧めている、といった声が寄せられました。また、ダッカに働きに出した自分の娘が、雇い主からの暴力や食事を与えられないなどの虐待に遭っていたという体験を、涙ながらに話してくれる母親もありました。
放送開始前はラジオ局のスタッフも家事使用人として働く少女の問題を問題として認識しておらず、それは聴取者である地域住民も同様でした。しかし、4局で予定していた全ての番組の放送が終了したところ、「もっと放送を続けて欲しい」という聴取者からの要望が多数寄せられ、4局とも再放送を行うことになりました。
シャプラニールは2015年度からコミュニティ・ラジオでの番組放送を継続して行っていますが、これまでの活動を通じて延べで約200万人もの地方部の人々が聴取したと推計され、多くの人にメッセージを届けられている手応えを感じています。
アティカ・ビンテ・バキ(シャプラニール・ダッカ事務所 アドボカシー・オフィサー)