2022年12月にバングラデシュに出張し、首都ダッカで家事使用人として働く少女の支援事業のモニタリングを行いました。その際に、ある家事使用人の少女の雇い先を訪問する機会がありました。

訪問したのは、事業に協力的で、家事使用人の少女との関係性がとても良いと言う雇用主の家。雇用主からは歓迎され、支援センターに通うようになってからの少女の変化について詳しく説明してくれました。

雇用主から話を聞き終え、別の部屋に移動すると、大量のおやつが待っていました。バングラデシュでは来客があると、お茶やお菓子などを振る舞って歓迎する文化があるのですが、今回あまりの量に驚きました。中でも花の形をした揚げ菓子があり、その凝った見た目に惹きつけられました。「これは誰が作ったの?」と聞くと、家事使用人の少女が一人で作ったとのこと。その量と形の複雑さから、おそらくかなりの時間をかけたのだろうと想像しました。

訪問先で振る舞われたお菓子

私が「外国からのお客さん」としてお邪魔したことにより、ものすごく手間をとらせたのではないか、家事使用人の少女の仕事を増やしてしまったのではないか、と申し訳ない気持ちになりました。実際に少女から個別に話を聞いてみると、その日常は決してゆったりしたものではありませんでした。14歳である少女は地方部に住む家族を支えるために住み込みで雇い主の家で働いています。朝7時に起きて家の家事をすべて一人でこなし、就寝するのは深夜1時頃。幼い子どもの面倒も見なければならず、休む暇はほとんどありません。

支援センターに通うようになってから少女と雇用主の関係性は改善し、少女自身も明るくなったと話していましたが、働き続けなければならないという厳しい現実は変わらないのです。子どもが家事使用人として働かないようになるためには、社会全体の意識が変わる必要があり、そうした変化はすぐには表れません。雇用主からの扱いが良くなっても、家事使用人の少女が働くことをやめて、学校に行ったり自由に過ごしたりすることはごくまれです。その現実を目の当たりにし、やるせない気持ちになりました。

それでも、希望はあります。少女は将来自分が選んだ仕事をしながら自立する、という夢を持っています。センターに通うようになってから、手工芸品づくりやアクセサリー作りといった特技が見つかり、将来の選択肢が広がったと話してくれました。雇用主も肯定的であり、幼い子どもが成長するまでは仕事を続けてほしいが、その後は少女の夢をサポートしてあげたいと語っていました。

センターで楽しく過ごす少女の様子(右から2人目)

このように、家事使用人として働く少女たちは少しずつ、自分たちの足で明るい未来に向かって歩んでいます。そのあと押しをし、少しでも少女たちが夢に近づけるよう、今後も活動を止めずに家事使用人の少女をサポートしていきます。

海外活動グループ・バングラデシュ事業担当 峯ヤエル

少女たちの未来を守るための活動を継続するため、皆さまのお力が必要です。2023年3月31日まで冬期募金の呼びかけをさせていただいていますので、ぜひご協力いただけますと幸いです。