昨年から続いているCOVID-19の流行はバングラデシュ社会に多大な影響を与えています。一つの深刻な問題として、児童労働の実態の悪化があげられます。今回は実際にシャプラニールが実施している児童労働削減事業「バングラデシュの家事使用人として働く少女への支援」の現場で起こっていることをお伝えします。

家事使用人として働く少女の数の増加

シャプラニールはバングラデシュの首都ダッカで家事使用人として働いている少女達への支援を10年以上継続してきましたが、最近新しく働きに出ている少女が明らかに増えています。現在シャプラニールはパートナー団体と共に実態を詳しく調べながら、新たに働きに出てきた少女たちへの支援も行っています。

今回、新たに支援の対象となった少女2人のケースをご紹介します。

・ナディラさん(10歳):父親がCOVID-19の影響で仕事がなくなってしまったため、家族全員でダッカに移りました。母親が家事使用人として働きはじめ、彼女も同じく家事使用人として働くことになりました。COVID-19前は、地元の学校に通い、小学3年生の学年で勉強をしていたそうです。

・シウリさん(13歳):COVID-10前は学校に通っていましたが、学校が閉鎖してからは家事使用人の母親に付き添うようになり、自分も家事使用人として働くようになりました。

実態調査のために雇用主宅を訪問する現地スタッフ
家事使用人として働く少女(写真はコロナ前に撮影)

コロナ禍で児童労働が増える理由

ユニセフ(国連児童基金)と国際労働機関(ILO)が発表した報告書「児童労働:2020年の世界推計、傾向と今後の課題」は、COVID-19による経済的ショックや学校閉鎖の影響で、2022年末までに世界全体でさらに900万人の子どもが児童労働に陥るリスクが高まっていると指摘しています。

バングラデシュ国内の児童労働の増加についての情報はありませんが、世界で最も人口密度の高い国の一つであるバングラデシュでは、感染拡大を抑えるために早い段階でロックダウン等の厳しい措置が導入されました。これにより失業・収入減してしまった家庭は多く、少しでも収入を増やすために子どもを働きに出さざるを得ない状況に陥ってしまいました。14歳~18歳の少女の場合は結婚させられることも多く、児童婚の増加も深刻な問題です。また教育機関の閉鎖が1年以上続いたため、家にいて何もすることがない子どもを仕事に出してしまう親も少なくありません。

9月12日から1年半ぶりに学校などの教育機関が再開されましたが、子どもたちの一部は戻ってきていません。その理由は、仕事を始めたから、もしくは結婚させられたからです。

バングラデシュ駐在員からのメッセージ

実際に現場で活動している内山智子事務所長からは、以下のコメントが届いています。

「支援センター周辺で新たに村から家事使用人として働きに来た少女がいることがわかっています。人数は把握できていませんが、この後も増えるだろうと現場では感じています。多くの人々(他団体,地域住民)も同じ意見を共有しています。COVID-19がバングラデシュに与えた影響は、経済・教育格差の広がり、貧困世帯の増加、児童労働・児童婚の増加など計り知れません。今まで私たちの活動により徐々に改善されてきたことが、大きく逆戻りしてしまいました。そのような状況ですが、シャプラニールは引き続き実態を詳しく調べながら、新たに働きにきた少女達への支援に力を注いでいきます。ぜひ皆さまのお力もお貸しいただければ幸いです。」

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