災害は、社会開発の成果を一瞬にして無にしてしまうほど大きな影響を社会に与えます。特に災害に対応する術を持たず、あるいは危険な地域に住まざるを得ない社会的・経済的に厳しいの人々がより多くの被害を受けやすいと言えます。自然災害の発生を止めることはできませんが、日常から減災に取り組むことにより、被害を抑えることはできます。サイクロンや洪水、地震などの災害による被害を軽減する防災活動を行政・コミュニティ・個人レベルで進め、災害に強い地域づくりに取り組みます。
シャプラニールでは、2015年の「ネパール大地震」発生後の緊急支援の後継プロジェクトとして、復興支援として将来の災害に備えた災害に強い地域づくりをカトマンズ市とラリトプール市で実施する。防災学習センターの運営や地域住民への啓発活動を通じて、地震に対する備え、建造物のリスク削減、非常用持ち出し袋の重要性等を伝え、地域の意識向上を目指す。
事業の成果
2019年度には、3カ年の活動成果をはかるために、終了時調査を実施しました。結果、調査の回答者や回答者の家族が災害リスク削減に関する研修を受けたり、大地震など災害発生時の避難場所や連絡手段について家族と話し合ったりするなど、回答者の55%が防災の取り組みに関わっていることが確認できました。また、回答者の46.5%が、大地震に備えができていると考え、地震に対する恐怖心が和らいだと回答しています。いずれも、事業初年度に実施したベースライン調査結果と比較して、10%以上の上昇となっています。
さらに、地震がどのように発生するか、避難場所、応急手当用品の備蓄場所、コミュニティ災害管理委員会の活動について知ることができた、自宅に緊急連絡網や非常用持ち出し袋を常備している、と回答した割合も、事業開始前と比較して上昇していることも判りました。このように、住民の間で次の災害に備えて、日頃から防災の取り組みを行うことの重要性が認識されるようになり、また各地域の防災管理員会による活発な働きや学校での防災教育が積極的に実施されているなど、住民の防災知識の定着が確認されたため、本事業は2019年10月をもって終了することとしました。
プロジェクト名称 | 地域で命を救う、地震復興&防災プロジェクト |
活動期間 | 2017年3月~2019年10月 |
活動地域 | ネパール、カトマンズ市・ラリトプール市 |
予算規模 | 約1,680万円(3年間) |
裨益者数 | 13,797世帯(56,882人) |
パートナー団体 | SOUP(スープ) >団体紹介 |
私たちが活動で目指すこと
ネパール大地震の被災体験とそこからの学びを活かし
住民の防災意識を高め、次の災害に備えること
ネパール大地震発生緊急救援支援復興支援から、
次の地震の被害を最小限に抑えるための防災・減災支援へ
ネパール大地震で大きな被害が出たにもかかわらず支援が届いていない都心部で、公共インフラの修繕を行いました。また、地域住民の被災時の経験共有や防災リーダーの育成を通して、次の災害へ備える力を身に付けました。
>ネパール大地震直後~2017年3月までの緊急救援・復興支援の活動についてはこちらをご覧ください。
問題と背景
2015年4月25日、9千人以上の死者を出したネパール大地震。復興活動の多くは被害が大きかったとされる地方部に集中し、都市部の被災者が取り残されるという状況が発生しました。古いレンガ造りの建物が密集する地域では多くの住宅に被害が出ていますが、奥まった通りに集中しているため大通りからは見えず、「カトマンズ市内はあまり問題ない」という印象を与えていることも一因です。また、ネパールはほぼ一定の周期で大地震が起きると言われており、災害リスクが非常に高い都市です。私たちは今回の被災体験の学びを将来の災害に対する防災・減災に活かすための支援を行いました。
目標を達成するために取り組んでいること
復興支援
支援から取り残されている地域に暮らす人々が一日も早く元の暮らしに戻れるよう、復興が遅れている地域で水汲み場などの社会基盤の修繕を行いました。また、ネパール大地震時の経験を次の災害時に活かし、さらに防災への意識を高めるためのワークショップを地域住民から構成される災害管理員会と協働して開催しました。
防災支援
将来予想される地震による被害を軽減するため、住民が主体的かつ継続的に防災活動に取り組むことを促すため、被災者への支援情報や防災情報を発信する防災学習センターを運営し、地域住民への啓発活動を進めました。
NGO × 企業・団体との協働
さまざまな企業や団体から、ご寄付での支援、物品寄付「ステナイ生活」での支援、現地の事業への直接支援などでご協力をいただき、事業を進めてきました。SDGs、CSR活動にご興味ある方・お問い合わせはこちらをご覧ください。
これまでの成果とSDGsへの貢献
重点分野のひとつ「災害に強い地域をつくる」ための取り組みが具体的にSDGsのどの部分の達成に貢献しているのか、該当するゴールとターゲットとその達成度を測るために設定された指標に照らし合わせました。
「住み続けられる街づくりを」該当ゴール 11
包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
ーターゲット 11.5
2030年までに、貧困層および脆弱な立場にある人々の保護に重点を置き、水害などの災害による死者や被災者数を大幅に削減し、世界の国内総生産比で直接的経済損失を大幅に減らす。
ー指標11.5.1
10万人当たりの災害による死者数、行方不明者数、直接的負傷者数
ーどのような貢献をしているのか
地震災害による死者数、負傷者数および建物の損害を最小限に抑えることを目的とし、対象地域の防災能力の強化を目指した。カトマンズ盆地内5区を対象に防災知識の普及、救命用具の設置などを行った。対象世帯数:13,797世帯(56,882人)
関連資料
・会報南の風287号 特集:シャプラニールの活動から見るSDGs詳細
・外務省公式サイト 日本のSDGグローバル指標の進捗状況について詳細
パートナー団体紹介
団体名 | SOUP(スープ) |
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団体概要 | 1992年、ボランティアによって設立されたNGO。カトマンズ市とラリトプール市で、女性と子どもを中心に支援活動を行っている。大地震発生直後、シャプラニールと一緒に高校生への奨学金支給や、トラウマ軽減のためのメンタルヘルスプログラムを実施した。
関連事業 |
現地活動ルポ
防災が身近になった3年
耐震性に乏しい伝統的な家屋が多く、4年前…
ご支援のお願い
シャプラニールは、皆さまからのご寄付やボランティアに支えられ、1972年より独立間もないバングラデシュの農村での活動から始まり、そして現在はネパールへも活動を広げ、現地の声を聞き対話を重ねながら支援から「誰も取り残さない」活動を続けることができています。
これからもこの活動を続けるには、皆さまの継続的なご支援が不可欠です。子どもたちが適切な教育を受け、社会の一員となり生活することを支援するこの活動を、ぜひ一緒に支えるてくださいませんか。
ご支援の方法はいくつかあります。ご寄付(今回のみ、月々)、物品のご寄付など、ご都合のよい方法でご支援をお願いいたします。